多額の借金を残し他界した父の相続を放棄したい
                                
          
自分たちの生活でさえギリギリなのに父の借金の肩代わりなど到底出来ません
          

たまたま見た本に、親に借金などがあって相続したくない場合、手続をすれば回避できるようなことが書いてあったのですが、本当ですか?

          

それは「相続放棄」という制度です。民法第915条では、相続をしたくない人のために相続人が財産の相続を拒否することを認めると定められています。相続放棄をすると、最初からその相続人がいなかったものとして扱われ、遺産分割協議に参加することもありません。

          

相続放棄の手続をしたいのですが、注意することはありますか?

          

相続放棄は、お父様(被相続人)が亡くなったときではなく、相続であなたがご自分のための相続が開始したことを知った時点から3か月以内に、つまり、お父様が亡くなったこと、それから自分が相続人となったことの両方を知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申立をしなければなりません。その期間を過ぎてからだと、相続放棄の手続を行なうことができなくなりますので、ご注意ください。

          

相続放棄をするにも期限が決められていて、いつでもできるわけではないのですね。

          

そうです。相続放棄をしたくても、単に知識がなかったために期限が過ぎてしまい、相続放棄が出来なくなるケースが多々ありますので、ご注意ください。

          
                     
結婚5年目で夫が突然他界し、相続した『住宅ローン』が払えない
                                
          
子どもがまだ小さいので生活費や学費だけで精一杯です。
          

夫を亡くし、住宅の名義変更をしてもらいたいのですが、私が相続する場合、まだ残っているローンの返済はどうなりますか?

          

原則として、相続財産の中に借金が含まれる場合は、家庭裁判所で「相続放棄」や「限定承認」といった手続をとらない限り相続人は、亡くなった方の借金を一緒に相続しなければなりません。ですから、今回あなたが、ご主人の財産の何かを相続した場合は、ご主人に代って、残りの住宅ローンの返済をしていかなければならなくなります。

          

共働きで、私もまだ正社員として会社勤めをしているとはいえ、子どもの養育費などを考えると、ローンを返済し続ける自信がありません。

          

住宅ローンの契約時に、「団体信用生命保険」に加入するのが一般的です。団体信用生命保険に加入していれば、住宅ローンの返済中にご主人が死亡された場合、保険会社が残ったローンを融資先の金融機関に支払い、住宅ローンを完済するようになっています。

          

そうなんですか!  では早速、「団体信用生命保険」に加入しているかどうか、金融機関に確認してみます。

          

ぜひ、そうしてください。もし、団体信用生命保険に加入されておらず、相続放棄の手続をする場合は、あなたがご自分のための相続が開始したことを知った時点から3か月以内に、家庭裁判所に申立をしなければなりませんので、なるべく早く確認されることをお勧めします。

          
                     
遺言書を残さずに亡くなった父、争いのない遺産分割がしたい。
                                
          
遺産を巡る親族間の争いは避け、円満に終わらせたいと望んでいます。
          

遺言書なしで相続手続を行う場合、どうすればいいです?

          

法律で決められた「法定相続分」を相続することもできますが、法定相続分とは違う形で相続したい場合は、「遺産分割協議」をすることになります。

          

「遺産分割協議」という言葉だけは聞いたことがありますが、実際どのような協議をするのでしょうか?

          

「遺産分割協議」というのは、相続人全員の間で遺産をどのようにして具体的に分けるかを話し合うことで、相続人が一人でも欠けていれば協議は成立しません。

          

では、その「遺産分割協議」をする前に、確認や注意しておかなければならないことはありますか?

          

まず
1.協議に参加する相続人が相続人として間違いないかどうか、他に相続人になる方が本当にいないかどうか?
2.遺産とされる財産は間違いなく亡くなった方のものかどうか、または他に遺産はないかどうか?
3.亡くなった方の生前に、結婚資金や独立資金を受けていたなど特別な受益を受けた相続人はいないかどうか?
4.亡くなった方の生前に、事業を手伝った・金員などの財産の給付をした・病気の看病をしたなど、財産の維持又は、増加など特別な働きをした相続人はいないかどうか? など

これらのことをよく確認してから遺産分割協議に入るといいでしょう。

          
                     
一度作った遺言書を撤回したい
                                
          
大病を患い10年前に遺言書を作りましたが、状況が変わったので内容を見直したいのですが。
          

一度作った遺言書を書き直すことはできますか?

          

民法第1022条で、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と定められていますので、書き直すことができます。

          

以前は長男に全財産を譲るつもりでしたが、今回、長女にも分配するよう、内容を修正したいのですが、それも遺言の撤回にあたるのですか?

          

はい、そうです。

          

では、遺言書の撤回は、どのように行えばいいですか?

          

前の遺言の一部または全部を撤回するという遺言書を作成して遺言書の撤回をします。たとえば、前の遺言内容を全て記入し「右遺言全部を撤回する」とすることもできますし、一部変更として「遺言中○○を、△△に変更する」とすることもできます。いつでも、何度でも、遺言の内容は書き直すことができますので、ご安心ください。

          
                     
私たち夫婦には子どもがいないので、『全財産をパートナーに』遺したい
                                
          
お互い相手に全財産が行くと思っていたのですが。
          

以前、友人から、私たちのような子どものいない夫婦は、相続の時に揉める可能性が高いと聞いたことがあるのですが、どういうことなのでしょうか?

          

例えば、あなたが亡くなったとします。その場合は、奥様が相続人になるのは当然として、その他にあなたの親が亡くなっていれば、あなたの兄弟姉妹も相続人になります。

          

そうなのですか? 妻が全て相続することはできないのですか?

          

残念ながら遺言書がなければ、全ての財産をそのまま奥様が相続することはできません。遺言書がない場合には、法定相続分で分けるか他の相続人と「遺産分割協議」をして決めることになります。しかし、遺言書があればご夫婦の考えどおり、遺された相手の方に全て相続させることができます。

          

その他にも遺言書がないと、後で揉めるケースはありますか?

          

そうですね。いくつかのケースをご紹介しましょう。

1.血のつながりがない、あるいは血のつながりが薄い者同士が相続人になる場合(例・先妻の子と後妻。先妻の子と後妻の子)
2.内縁関係のカップルの場合
3.亡くなった方の介護をしていた方に相続権がない場合(例・長男の妻、長女の夫など)

これらの場合には、遺言書を遺すことでトラブルを未然に防ぐことができますし、亡くなった方の想いも叶えることができます。そういった意味でも、遺言書を作成されてはいかがですか。